人の幸福は長続きしない?【快楽順応〜ヘドニックトレッドミル現象〜】

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せっかく新しい車を買ったのに、もう次の車が欲しくなっている。
転職をし、新しい気持ちで取り組み始めたかと思いきや、もうダレてきてしまっている。

似たような体験、皆さんも一度はあるのではないでしょうか?

それはあなたが飽き性なのではなく、人間に備わったひとつの機能がもたらす現象だとしたら、どう思いますか?

 

人には、生まれながらに備わった「身体機能」が存在します。
その仕組みを知り、上手く扱えるようになれば人生はもっと生きやすくなるはずです。

人には生まれながらにどのような性質が備わっているのか。
今回は、人に備わった身体機能のひとつ「ヘドニックトレッドミル現象」について説明いきます。

「快楽順応」とは?

「ヘドニックトレッドミル」を直訳すると、「快楽のランニングマシン(hedonic = 快楽、treadmill = ランニングマシン)」という意味になります。「快楽順応」とも訳されるこの現象は、一時的な情動はすぐに慣れてしまうという状態を表しています。もう少し噛み砕くと、度感じた幸福は時間とともに慣れてしまい、同じ刺激では幸福を感じづらくなるということです。

具体的に、快楽順応が発生するシチュエーションをみていきます。

 

満たされない欠乏欲求

例えば、一日中肉体労働をしてお腹がペコペコの自分をイメージしてみてください。

その状態で食べた料理は、大きな幸せを感じさせてくれるでしょう。
その料理があなたの好物でなかったとしても、空腹の状態で食べる料理は何物にも勝ります。

しかし、あなたの空腹が満たされ始めると、食によってもたらされた幸福感はだんだん下降していきます。
これこそ、ヘドニックトレッドミル現象のもたらす効果です。

どれだけあなたの大好物だとしても、毎日食べていると幸せを感じづらくなるはずです。

「幸福は長続きしない」

そしてこれは「お金」にも同じことが言えます。
それを実証したある実験があります。

宝くじに当たった人の末路

ある心理研究で「宝くじに当たった人の幸福度」がどのように作用するのかを調べる実験が行われました。

宝くじに当たった人に協力してもらい、アンケートに回答してもらいます。
すると、宝くじに当たった直後は一般の人と比べて高い幸福度を示したにも関わらず、1年後にアンケートを行うと、一般の人々と変わらない幸福度であることがわかりました。宝くじによって当たったお金は、まだ半分以上も残っているにも関わらず、です。

このことから「快楽順応」はお金にも作用し、生活レベルが向上しても1年後には慣れてしまうということが明らかになりました。

もし人間に快楽順応の機能がなければ、もっと簡単に幸せを得ることができるはずです。一度感じた幸福を永続することができれば、好物を食べ続ければ良いように、同じ行動を続けていれば良いからです。

しかし私たちは、どれほど好物でも食べ続ければ飽きるし、楽しいことにも慣れていきます。

なぜ人間には「快楽順応」のような機能が備わっているのでしょうか。
それは人類にどのようなプラスがあるのでしょうか。

生物最強の武器「脳」

生物の身体構造が変化するには、何万年という月日がかかると言われています。

人類が農耕を始めたのがおよそ1万年前。
それ以前はずっと狩猟採集時代だったため、人は狩猟採集時代で生き延びるために必要だった身体構造をしているということがわかります。

そして、そのひとつが「快楽順応」なのです。

なぜこの機能が必要だったのか。
それは人類が生存競争に勝ち残ることができた要因である「脳」にあります。

私たちには、肉食動物のように牙や爪もなければ、草食動物のように強靭な身体があるわけでもありません。それでも生命の生存競争に勝ち、地球を制圧できたのはひとえに「知恵」があったからでしょう。

罠を仕掛けたり、武器を作ったり、集団で連携をとることができたため、人類はここまで文明を進めることができました。複雑な物事を瞬時に判断できる我々の脳は、その分大きなエネルギーを必要とします。脳を働かせるために、私たちはたくさんの栄養素をとることを強いられました。

他の生物が同じ食物を食べるのに対し、我々人類は雑食です。植物を食べ、動物を食べ、穀物を食べる。これだけたくさんの種類の食べ物を口にするのは人類だけでしょう。

たくさんの栄養素をとったことで脳が進化したのか、脳を働かせるためにたくさんの栄養素を必要としたのか、その順番は定かではありませんが、どちらにせよ私たちが生きるためには多種の栄養素をとり、脳を活性化させる必要があったということです。

そして、その時に役立ったのが「快楽順応」の働きです。
同じものを食べ続けていては満たされないとなると、自然と人類は多種の食べ物を口にするようになります。つまり、「快楽順応」は人類が生き残るために備わるべくして備わった機能なのです。

定期的な変化を取り入れる

幸福はすぐに慣れてしまう。
別の言い方をすれば、「安定の先に幸せは感じづらい」とも言うことができます。

人の欲求には「安定したい」という欲求とともに「不安定さ」を求める欲求も備わっています。それが良くない方向に向いてしまうと「ギャンブル」「浮気」「犯罪」のような形で刺激を求めるようになります。

エリート街道を歩んでいた子どもが裏でいじめをしていたり、真面目な公務員がギャンブルにハマったりする事例は多々あります。このような間違った刺激を求めないためにも、プラスの形で新しい刺激を人生に取り入れることが大切です。

「転職」「引っ越し」「結婚」のように大きな変化も大切ですが、快楽順応から逃れるためには「日々の小さな変化」が有効な手段です。

新しい分野を勉強してみたり、新しい人の繋がりを作ってみたり、休みの時間で新しい活動を始めてみたり。

小さな変化をし続けることこそ、長期的な幸福には必要なのです。